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世界を学ぶ 戦時下日記

ユーラシア大陸の中心で起きていること
ー戦時下日記(6)

西アジア中国を震源地として、本当に重要なことが起きていると思うのでまとめておく。

*以前、イランのハメネイ師が「ここは西アジアだ。中東などではない」と言っているのを聞いて「なるほど」と思ったので、西アジアを採用する(「中東」とか「極東」はヨーロッパを基準点とする言い方である)。

1 西アジアー和解に次ぐ和解

【予備知識】西アジアにおけるアメリカ

・アメリカは、冷戦終結後もロシア・中国・イランを敵視し、これらの国と良好な関係を保つ国々(イラク、北朝鮮、シリア、リビア、イエメン、ソマリア)で、政権転覆等を目的とした代理戦争を展開してきた(主な手段は武力攻撃と経済制裁)。

・アメリカの西アジアにおける最重要同盟国はサウジアラビア。サウジは長年イランシリアと対立して西アジア・アラブ世界で両者を孤立させ、アメリカの利益に貢献してきた。

・西アジアでの紛争状態の継続は、アメリカの利益(石油資源確保、武器輸出拡大、影響力保持)に合致した。

・もっとも破壊的な影響を受けたのはシリア

ーアメリカはアサド政権に「専制主義」のレッテルを貼り打倒を目指している(事実は異なる。アサド政権のシリアは世俗国家であり、近隣の王制国家と比べはるかに民主的)。

ーアメリカは2011年の反政府運動(「アラブの春」の一部)を契機に勃発した内戦で反政府側を強力に支援してきた。西アジア諸国ではサウジ、トルコ、カタールが反政府側。

ーアメリカは2015年から正式にシリアに駐留を開始。現在も一部を占領し、経済制裁も続けている。

ーISISとの戦いというのは口実に過ぎず、①中国、ロシアとの経済的関係(シリアはこれらの国に石油を売り武器を買っている。アメリカはこれらの国に石油を売ってほしくなく、また自国の武器を買ってほしい)、②イランとの政治的友好関係(アメリカは2010年に「イランとの関係を解消すればその見返りとして経済制裁を中止する」とシリアに提案して断られている)、③政権転覆(アメリカはアサド政権を倒しアメリカに従順な政権に変えたい)が主な目的と見られている。 

(1)サウジアラビアとイランの和解

・そういうわけで、サウジを中核とするイラン・シリア包囲網の構築がアメリカの西アジア政策の肝であったが、3月以降、この包囲網が一挙に瓦解をはじめ、西アジアに平和が訪れようとしているようなのである。

・3月10日、サウジとイランは外交関係正常化(7年ぶり)で合意した。共同声明は3カ国の連名でもう1国は中国。3カ国は北京で4日間に渡って協議を行ったとのこと。中国政府が仲介役を果たしたのである。

・アメリカは「イランが履行義務を果たすかが問題」とか言っていたようだが、履行に向けた動きは着々と進んでいることが窺える。

・4月6日にはサウジとイランの外務大臣が北京で会談して大使館の再開に向けた合意を締結。サウジの国王はイラン大統領をサウジに公式に招待し、大統領もこれに応じたという。

この記事を大いに参考にしました

(2)サウジーシリア関係にも和平が波及!

・3月末、サウジとシリアが外交関係の正常化に合意したことが伝えられ、4月18日にシリアでサウジ外相とアサド大統領が会談した。

・サウジは5月に開催されるアラブ連盟の首脳会議にアサド大統領を招待する方針とのこと。

アラブ連盟からの排除(ヨーロッパの国がEUから除名されたようなものだろう)というのが、アメリカの意向に基づく「シリアの孤立」の象徴のようなものだったので、これは本当に大きな動きなのだ。

シリアの外務大臣は4月1日はカイロを公式訪問している(4月12日にはサウジ。いずれも12年ぶりとのこと)。サウジ、エジプトというアラブ連盟の二大大国がシリアを歓迎していることが窺える動き。

・この動きの前提には、シリア内戦でアサド政権側がすでに勝利を決定的にしていて、周辺国がアサド政権の正統性を認めているという事実があるらしい。実際、サウジとの関係正常化に先立つ今年2月に、レバノンチュニジアアラブ列国議会同盟に属する各国の議員たちが相次いでシリアを訪問していた。

・そうした事実を前提に、仲介役を果たしたのはロシアであるらしい。

今年3月のモスクワでの会談の様子https://www.france24.com/en/middle-east/20230315-assad-meets-putin-in-moscow-as-syrians-mark-12-years-since-anti-regime-uprising
今年3月のモスクワでのアサド・プーチン会談の様子
https://www.france24.com/en/middle-east/20230315-assad-meets-putin-in-moscow-as-syrians-mark-12-years-since-anti-regime-uprising

・3月20日-21日には非常に印象的な習近平のモスクワ訪問があったが、そのときにこうしたことも話し合われていたに違いない。

・ちなみに中国はイスラエル-パレスチナ和平の仲介にも積極的な意向を示している(さすが共同体家族だ)。

*ところでシリア情勢とくにアサド政権について日本語で出回っている情報は「専門家」とか「現地で取材したジャーナリスト」のものを含めてほとんど嘘ばっかりだと思います。私はまず元外交官の国枝昌樹さんが書いたこの本(↓)を読んで「世間で言われていることは全然間違ってるっぽい」ということを知り、以後は情報を海外の非主流メディアに求めています。

国枝昌樹『シリア アサド政権の40年史』(2012年、平凡社)
この記事ではこのスレッドを大いに参考にしました。

*内戦前のシリアの美しい街並みを紹介したこちらの記事もとてもおすすめです(写真しか見ていません)。

https://www.theatlantic.com/membership/archive/2018/04/remembering-syria-before-the-war/558716/

(3)イエメンも?

イエメン内戦にも波及効果が期待できるという。

・イエメン内戦は、一般に「暫定政府軍」とシーア派の武装組織「フーシ派」の戦いとされている。前者の背後にはサウジがいて、かなり積極的に関与しているという。

・一方、世間では、フーシ派の背後にはイランがいるとされているが、アメリカが主張するほどイランが積極的に関わっているわけではないらしく、まだよくは分からないのだが、実態はサウジ=アメリカが扇動する戦争ということなのかもしれない。

・いずれにしても、サウジとイランの関係が改善するなら、イエメン内戦の終結は十分に期待できるのだ。

・4月14日から16日に行われた捕虜の交換は、両者の間で対話と妥協が成立しつつあることをうかがわせる。

・4月8日にはサウジの代表団停戦協議のためにイエメンを訪問し、次回の協議は4月21日に行われるという。

サウジはイエメン南部の港における輸入品の封鎖措置を解除することを発表、イランはフーシ派への武器送付を停止し、フーシ派にサウジへの攻撃を止めるよう圧力をかけることに合意したと報道されている。

サウジはイランがイエメンから手を引くなら、サウジはイラクとシリアから手を引くと約束したともされており、これが実行されるなら、本当に、シリアにもイエメンにも同時に平和が訪れるということになるだろう。

フーシ派のリーダーと握手するサウジ代表団

(4)アメリカだけが嬉しくない

アメリカは、イランおよびシリアとの和平に向けたサウジアラビアの動きを「不意打ち」と非難しCIA長官ウィリアム・バーンズをサウジに送り込んでいる。

https://www.businessinsider.com/cia-director-visited-saudi-mend-tattered-relations-mbs-report-2022-5

・しかし、サウジはもうずいぶん前から明確に「中立」の姿勢を打ち出し始めている。

・2021年には上海協力機構に対話パートナーとして加盟(今年の3月にサウジ議会も承認)、BRICSへの参加を目指していることも伝えられている。

・ウクライナ紛争では対ロシア制裁への参加を拒否した上、ロシア産原油の輸入量を2倍に増やし、対ロ制裁の効果を高めるためのアメリカからの石油増産要請すら拒絶している(大幅に減産した)。

・「中立」とは、この文脈では、アメリカの一極支配ではなく中国やロシアが推し進める多極化した国際秩序を支持するということなので、サウジは明確にアメリカに反旗を翻しているのだ。

2 ルーラは動く(中国訪問)

もう一つ、重要だと思うのは、ブラジル大統領ルーラの中国訪問である。

ルーラは3月下旬に中国訪問の予定を直前にキャンセルし(「本人の病気」が理由)、「むむ、怪しい‥(アメリカに懐柔されたのか?)」などと思っていたが、4月12日-15日に訪中が実現。

私の疑念を大いに払拭するハイテンションで、多極的世界に向けた意欲を語っていた(そして中国の人々に大喜びされていた)。

中国でのルーラの発言はすごい。

ウクライナ情勢については「アメリカは戦争をけしかけるのを止めて、停戦協議を始めるべきだ」。

*この発言についてアメリカは不快感を示し、ロシアは賞賛している。

*なおブラジルは、今年3月にロシアが国連安全保障理事会にノルド・ストリームの爆破について調査するよう求めた際、ロシア、中国とともに決議案に賛成している。

おまけに、ドルの覇権にはっきり疑問を呈する発言もしているのだ。

私は毎晩考えます。いったいなぜ全ての国が貿易をドルベースで行わなければならないのかと。なぜ私たちは自国の通貨で取引をすることができないのでしょうか。金本位制の後、ドルを基軸通貨にすると誰が決めたのでしょうか?

https://www.france24.com/en/americas/20230414-brazil-s-lula-criticises-us-dollar-and-imf-during-china-visit

中国とブラジルは3月に両国間の貿易を中国元ブラジル・レアルで行うことで既に合意していた(同様の動きは中国、ロシアの周辺のあちこちで出てきている)。ルーラはこれがドルの支配から抜け出すための動きであることを非常に明確に語ったわけである。

今まで中南米では、アメリカに抵抗し、なかでもドルの覇権に抵抗する動きを見せた為政者は、必ずアメリカの手によって倒されてきた(と分析する記事を読んだことがある)。

ルーラ自身も前回の大統領の任期中に汚職の罪をでっち上げられて投獄されているのだ(CIAの関与があったとされている)。

ルーラにせよ、サウジにせよ、彼らの行動をアメリカがどのように受け止めるかは熟知しているはずである。

それにもかかわらず、これほどあからさまに動くということは、彼らが「潮目は変わった」と見ていることを示していると思われる。

彼らは、「現在のこの世界では、もはやアメリカに従順に従う必要はない。いや、むしろ従うべきではない」と考えているのだ。

西アジア中南米、そしてアフリカがはっきりとアメリカ(ないし西側)一極支配体制から離脱する動きを見せている。

アメリカおよび西側は、もはや信頼に値するリーダーとはみなされていない。それだけで、すでに、アメリカ(および西側)の覇権は終わっているといえると思う。

中国側は歓迎式典で(アメリカが支援していた)ブラジルの軍事政権時代の
抵抗運動を象徴する曲を演奏してルーラを驚かせたという

3 おわりに

ウクライナは膠着状態(勝ち目はない)、西アジアにおける影響力を中国、ロシアに奪われ、グローバル・サウスがドル覇権体制から離脱する‥‥となると、アメリカは台湾問題で賭けに出るしかない、という感じがいよいよ強まる。

日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドは、ギリギリまでアメリカに従って動き、最後の最後に引導を渡す、というような役回りであろうか(このツイートの動画が面白かったです。是非↓)。

ちゃんと考えている人がいるといいなあ。

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(翻訳)メディアと国家
-アメリカの場合-

以下は、Caitlin Johnston, The US Could Use Some Separation Of Media And State の翻訳です。何かすごく新しいことが書いてあるわけではありませんが、「へー」と思うことが(私は)いくつかありました。お役に立てば幸いです。 

目次

アメリカ政府とメディアの間に線引きはない

アメリカ国務省の報道官ネッド・プライス(写真↓)に代わってマシュー・ミラーが就任した。プライスと同様、ミラーは以前からアメリカ政府とマスメディアの双方に深い関わりを持つ人物である。プライスは元CIA職員でオバマ政権の国家安全保障会議のスタッフ、NBCニュースのアナリストとしても長年活躍した。ミラーはオバマ政権、バイデン政権で働き、MSNBCのアナリストも務めていた。

Ned Price
元CIA職員、オバマ政権のNSCスタッフ、NBCニュースのアナリスト

他の政府高官と同様、アメリカ帝国がしでかすロクでもない物事をまるでよいことのように語り、都合の悪い質問には遠回しな言葉遣いで煙に巻き何も答えないことがミラーの職務となるだろう。これは、なんと偶然にも、主流メディアのプロパガンダたちの仕事と本質的に全く同じである。

ジャーナリズムの学校では、政府とメディアの間には明確な一線があると教えられる。ジャーナリストの仕事は政府の責任を追求することである。ジャーナリストが政府高官と友人関係にあったり、政府で仕事をすることへの期待を持つことは、明らかな利益相反であると。

しかし、世界でもっとも強力な政府と、世界でもっとも影響力のあるメディア・プラットフォームの最上層においては、メディアと国家の間の一線は事実上存在しない。彼らは政権交代に応じてメディアと政府の間をまったくシームレスに行ったり来たりするのである。

 

ホワイトハウスの報道官たち

ホワイトハウスの報道官では、政府とメディアの一体性はよりいっそう明瞭である。現報道官のカリーヌ・ジャンピエール(↑)はNBCニュースとMSNBCの元アナリストであり、前報道官のジェン・サキ(↓)は現在MSNBCで自分の番組を持っている。サキはホワイトハウスの報道官を務める前はCNNのアナリストとして働き、その前はプライスやミラーと同じく国務省の報道官だった。

ニュース関連のスタートアップ企業Semaforの最近のイベントで、自分をジャーナリストだと思うかと問われたサキは、思うと答えて次のように述べた。

私にとって、ジャーナリズムとは一般の人々に情報を提供し、明確な理解を助け、わかりやすく説明することです。

これはちょっと笑える。サキの党派(民主党)は、過去7年間、ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジはジャーナリストではないと猛烈に主張し続けてきた。リベラルの脳内では世界最高のジャーナリストはジャーナリストではなく、ジョー・バイデンのスポークスマンはジャーナリストなのだ。「わかりやすく説明する」能力が高いというだけの理由で。

もちろん共和党も

この現象が民主党と協力メディアに特有のものという誤った印象を与えてはいけないので、共和党関連の事実を付け加えておこう。

トランプの報道官サラ・ハッカビー・サンダース(↑)は、その職を辞した直後にFox Newsに仕事を得て、今はアーカンソー州の知事になっている。もう一人のトランプ政権報道官、ケイリー・マッケナニー(↑右)は、今はFox Newsで働き、以前はCNNに勤めていた。

報道によると、トランプの初代報道官ショーン・スパイサーは、ホワイトハウス勤務後にCBSニュース、CNN、Foxニュース、ABCニュース、NBCニュースの仕事を得ようとしたが、すべての会社から断られた。誰からも好かれていなかったのがその理由だという。

情報統制を政府に指示する米メディア

メディアと国家の間に明確な線引きがない以上、アメリカのメディアは、西側が声高に「専制主義」と非難するロシアや中国の国営メディアと有意の違いはないといえる。

唯一の違いといえば、専制主義国家では政府がメディアをコントロールするが、自由民主主義国家では政府がメディアである(政府とメディアが一体)ということだろう。

ジャーナリストのマイケル・トレイシーはツイッターで、国防総省からネット上に流出した文書に関する今日の国防総省の記者会見でメディアから出された質問がすべて、文書に記載された情報に関するものではなく、国防総省がその文書の流出を防げなかった過ちに着目したものだったことを指摘している。

ジャーナリストとして政府からもっと多くの情報を得て真実を明らかにしようとする代わりに、彼らはなんと重要な情報がジャーナリストの手に渡るのを防ぐ措置を取るよう政府に働きかけているのだ。

こうなると、全体主義国家と自由民主主義国家の違いとして、もう一点を指摘せざるを得ない。全体主義国家では政府がメディアに不都合な情報を出さないよう指示するが、自由民主主義国家では不都合な情報を出させないよう、メディアが政府に指示するのである。

ペンタゴンの機密文書漏洩者を特定したのはNYタイムズの記者集団 

ペンタゴンの文書をリークしたとされているJack Teixeiraという21歳の州兵はFBIに逮捕される前にニューヨーク・タイムズ紙に追跡されすでに名前が挙がっていた

ニューヨーク・タイムズは数十人の記者を集めてチームを作りリークの犯人を追い詰めた。その際にはアメリカ帝国が出資するプロパガンダ会社Bellingcatからの情報も用いていた。

本来連邦の捜査官だけに義務付けられたこの仕事を最初に引き受けたのは主流メディアの記者だったのだ。FBIさながら、機密情報を漏らした人間の自宅のドアを蹴り破り、その飼い犬を撃つニューヨーク・タイムズの記者達は、私たちからほんの1、2クリックのところにいる。

Twitterのラベリング

この間、国のプロパガンダ機関であるNPRは、Twitterが彼らのアカウントに「政府の資金提供(Government Funded)」という正しいラベルを貼ったことに癇癪を起こしている(その前は「アメリカ政府系メディア」(US state-affiliated media)でこちらも正しい)。

笑わせるのは、NPRが「ツイッターはわれわれが編集上の独立性を持っていないという虚偽の情報を示唆することでわれわれの信頼性を損なっている」という理由で怒ってTwitterを退会したことだ。NPRには損なうだけの信頼性などもともとないのに。

最近論じたように、NPRはアメリカ政府からの資金援助を受け、一貫してアメリカ政府の利益に合致する情報を流している。NPRを経営しているのは、アメリカ政府の対外プロパガンダネットワークであるUS Agency for Global Mediaの元CEOである。こうした点からすると、「政府の資金提供」というラベルは相応しいとは言えない。むしろロシアや中国の国営メディアと全く同じラベルを貼るべきである。実質的に違いがないのだから。

 

Voice of Americaの「独立性」

もっと笑わせるのは、アメリカの文字通りの国営メディアであるVoice of Americaが同じく「政府の資金援助」というラベルに異議を唱えてNPRに(全く無意味な)連帯を示していることである。Voice of AmericaはNPRの苦境を伝える「ニュース」の中で次のように書いている。

VOAの広報部もまたこのラベルはVOAは独立のメディアではないという誤った印象を与えるとしてTwitterの決定に反対している。

TwitterはVOAのコメント要請に応じていない。

VOAはU.S.Agency for Global Mediaを通してアメリカ政府の資金提供を受けているが、編集の独立性は規制とファイアーウォールによって守られている。

VOAの広報担当ディレクターであるブリジット・サーチャックは次のように述べている。

「『政府の資金提供』というラベルはミスリーディングであり、『政府が管理している』と解釈されるおそれがある。VOAは間違いなくそうではない。」

「我々の編集上のファイヤーウォールは、法律に明記されており、ニュース報道と編集の意思決定プロセスにおいて、いかなるレベルの政府関係者からの干渉も禁じている。

「この新しいラベルはVOAのニュース報道の正確さと客観性について不当で是認できない懸念を呼び起こすものであり、VOAは引き続きTwitterと協議しその違いを訴えていく所存である”。」

Branko MarceticがTwitterで指摘したように、VOAの「編集の独立性」に関するこれらの主張は、35年間同機関に勤務した人物によって真っ向から否定されている。

コロンビア・ジャーナリズム・レビューの2017年の記事「Spare the indignation:Voice of Americaに独立性はない」において、VOAのベテラン、ダン・ロビンソンは、VOAのような機関は通常のニュース会社とはまったく異なり、政府資金を受けるためにアメリカの利益を促進するための情報を流すことが期待されているという。

私はVOAで約35年間、ホワイトハウス特派員長から海外支局長、主要言語部門の責任者まで務めたが、以下の2点を長期に渡る真実として断言することができる。第一に、アメリカの政府資金を受けたメディアの運営は深刻な問題を抱えている。それはオバマ大統領が2017年度国防授権法に署名したときにクライマックスに達し、議会における超党派の改革努力を促した。第二に、議会やその他の場所において、継続的な資金提供を受けている以上、これらの政府系放送局は、国家安全保障機構の一部として、ロシア、ISIS、アルカイダなどとの情報戦の支援により積極的に関わるべきだという合意が広範に成立しているということだ。

*「第一に」からのくだり(とくに「それは‥」の文))の翻訳はあまり自信がないです。超党派の改革努力というのはこれのことかもしれません。

メディアと国家、企業と国家の分離が必要だ

至る所に、西側の人々が情報を得ているニュースメディアとアメリカ政府との間の広範かつ密接なつながりを見てとることができる。

おまけに、アメリカのメディアを所有ないし影響力を持つ富裕層と政府の間にも実質的な線引きは存在しない。企業が政府の一部であるなら、企業メディアが国営メディアとなるのは当然のことといえる。

もし、メディアと国家の分離、企業と国家の分離の原則が、政教分離原則と同等に重要視されていたら、アメリカは間違いなく全く異なる国になっていただろう。

国内では自国民を貧困に陥れ抑圧し、海外では人々を爆撃して飢餓に追い込む。そんな狂人めいた現在の政治体制をアメリカ国民が支持している理由は、その支持が政府と事実上一体であるメディア階級によって捏造されたものだということ以外にありえない。

メディアがその本来の場所に置かれ、政府に対峙しその行動を監視する役目を果たすなら、国家の諸問題の根底にある力学が国民の目に明らかになることだろう。

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アーダーン首相はなぜ辞めたのか

はじめに

ジャシンダ・アーダーンがニュージーランド首相の辞任を発表したとき(2023年1月)、驚くと同時に「あ、あれか?」と思い当たることがあった。

古い話になってしまったが、日本にとって大事なことだと思うので書く。

訪米(2022年5月)

2017年に弱冠37歳で首相に就任したアーダーンの政治姿勢に私は何となく好感を持っていた。

それだけに、2022年5月31日、バイデン米大統領とのワシントンでの会談後の共同声明をテレビで見たとき、ちょっとがっかりしたのを覚えている。以下はロイターの記事から引用。

会談後に出した共同声明では、中国とソロモン諸島の間で合意された安全保障協定に懸念を示した。「われわれの価値観や安全保障上の利益を共有しない国家が太平洋に永続的な軍事プレゼンスを確立することは、この地域の戦略的バランスを根本的に変え、(米NZ)両国にとって国家安全保障上の懸念となる」とした。

 

https://jp.reuters.com/article/usa-newzealand-idJPL4N2XN3Q3

このときにはもちろんウクライナ戦争についても話し合われたということなので、おそらく、ニュージーランド(以下NZ)はNATO-アメリカに対するそれなりに濃密な支援を約束したに違いないと思う。

日本で見ているとNZは牧歌的で平和な国という印象だが、実際にはそれなりの規模の軍隊を持ち、第二次大戦後も朝鮮戦争、ベトナム戦争から一連の「対テロ戦争」まで、忠実に米英に付き従って戦闘に参加している。

*私はオークランド博物館で見て知った。同博物館の展示は1フロア分「戦争博物館」の趣である。

FIVE EYESへの「不快感」表明  

しかし、中国に対して「価値観を共有しない国家」と決めつけ、「国家安全保障上の懸念」と宣言することは、アーダーンの本意ではなかったと思う。

ちょうどバイデンとの会談の1年ほど前から、NZは、米英を中心とするFIVE EYESの安全保障政策から距離を置き、NZ自身の価値観と国益に基づいて、外交上の決定を自律的に行いたいという姿勢をはっきりと示し始めていた。

2021年4月、政権の2期目に新たに着任した(ということは、より政権の色が出ているということだろう)外務大臣 Nanaia Mahuta(写真↑)は、対中国政策に関して、NZはFIVE EYESから独立して、外交と対話を重視したアプローチを取ると述べた。

同じ席でMahutaは、FIVE EYES(「米英」と読み替えればよいでしょう)がその権限を超えて様々な圧力をかけてくることへの不快感を表明し、自分たちは独自の道を行く、と宣言しているのだ。

https://www.theguardian.com/world/2021/apr/19/new-zealand-uncomfortable-with-expanding-five-eyes-remit-says-foreign-minister

NZは、そのさらに1年前(2020年5月)、FIVE EYESが中国の国家安全法施行を非難したときにも、共同声明に参加していなかった。

https://www.stuff.co.nz/national/politics/121667644/new-zealand-missing-in-five-eyes-condemnation-of-beijing-over-hong-kong-security-law

FIVE EYES という機密情報共有のための枠組みは外交上の懸念を取り扱うのに適切な場ではないという考えであったというが、圧力ではなくて話し合い、というスタンスはこのときからはっきりしていたのだ。

 *アーダーンはコミュニケーション学で学位を取っている(wiki)。

このスレッドを大いに参考にしました。

なぜ辞職?

アーダーン首相は、米英の圧力外交に抵抗し、独自の平和・話し合い路線を行きたかった。

とくに中国との関係はNZにとっては決定的だ。経済的にも軍事的にも何か起きればただでは済まない。

国民に対して責任を有する首相として、NZの価値観と国益に従って行動する道を付けるべく、アーダーンは努力した。素直に、かなり直球勝負で、米英の圧力から逃れるべく、外務大臣とともに戦った。

そして‥‥その試みは、おそらく、大国アメリカによって挫折させられたのではないだろうか。

近年、各国首脳がワシントンに招かれて懐柔されることはよくある(どういうやり方を取っているのかは知らない)。

*もちろん真偽は不明だがロシアの外務大臣ラブロフが語っている映像を見たことがある。「私にはアメリカや世界中に友人がたくさんいて、アメリカのやり口を教えてくれる。彼らは「あなたのお子さんは・・大学にいらっしゃいますよね」「ところであなたの銀行口座は・・」といった調子で明け透けに利益誘導ないし脅迫をするというのだ。ここにいる多くの人たちもそのことを知っているはずだ」(というようなことを語っていました。)

アーダーンはニュージーランド人だ。自由と民主主義の国のリーダーとして、大国と小国という関係性はあるにせよ、アメリカともイギリスとも価値観を共有するパートナーとして同盟を組んでいるのであり、従属しているわけではないと信じていただろう。

しかし、現在のこの世界では、アメリカはNZが独自路線を取ることを許さない。決して。アーダーンはワシントンでかなり最低最悪の方法でそれを伝えられたのではないかと思う。

そんなことが分かってしまったら、政治に立ち向かうエネルギーなんてなくなってしまう。当然だ。素直によりよい世界を目指していればなおのこと。

*一方、世間で言われているような「批判が強まっていた」というくらいの理由では、志をもって首相になった人間が政治家を辞めたりはしないと思う。

アーダーンが首相だけでなく議員も辞したのは、そういう事情ではないかな、と私は思っている。

おわりにーアメリカについて語ろう

近年、日本がアメリカの属国であるということは、普通に言われるようになった。

しかし、では、日本がアメリカから離反しようと正面から努力してできる状況なのかといえば、そうではないことは明らかだと思う。

何しろ、今や属国扱いは戦争に負けた日本や(負けたわけではないけど)保護国扱いの韓国だけではない。ほとんどすべての西側の国が事実上従属を迫られているのだ。

いまの世界情勢(日本や多くの国では国内問題のかなり多くの部分を含む)における最大の問題は、明らかに、アメリカである。

コロナ・ワクチンをめぐる騒動だって、インフレだって、エネルギー価格の高騰だって、そうした様々に関する報道規制(自粛を含む)だって、基本的に全部アメリカが引き起こした問題だ、と言うのは陰謀論でも何でもない。健全な常識だと思う。

第二次大戦後の一時期は世界の安定の要であったはずのアメリカが、いつしか支配層を中心に暴走を始め、アメリカ国民を含む世界中の人々の安定を脅かしている、というのが現在の世界情勢である。

*暴走に加わっているのはアメリカの支配層だけではないと思うが渦の中心がアメリカであることは間違いないので「アメリカ」で語らせてもらう。

だったら、もっとアメリカについて語った方がよいのではないだろうか。

暴走機関車が世界中で暴れ回っているのなら、世界中の人たち(アメリカの人たちをもちろん含む!)と協力して、どうやって暴走を止めるか、どうやって被害を最小限に食い止めるか、話し合った方がよいのではないだろうか。

いわゆる「グローバル・サウス」の諸国やロシア、中国は、とっくにそのことを考えているだろう。

マクロンの発言があったけど、中国との関係でアメリカがさらなる動きに出て、ヨーロッパがうまくそこから離反したとき、最後まで「アメリカ対策」に悩まされることになる同胞は、韓国であり、もしかすると、ニュージーランドやオーストラリアなのかもしれない。

日本の知識人の間で「問題」としてのアメリカについての語りがあまりにも少なく、私はちょっと怪訝に思っている。

語ったからといってできることは少ないだろう。しかし、アメリカの支配層が引き起こしている問題を、日本の国内問題と捉えて政府を批判したり、ましてや中国やロシアに押し付けたり、そういうことをして、これからを生きていく小さく若い人たちに歪んだ鏡で世界を見るように仕向けるなんて、知識人としては最大の罪ではないだろうか。

よりよい将来のために、アメリカについて、アメリカ後の世界について語ろう。世界中の人々(しつこいようだが、アメリカの人々を含む)とともに。

いま、社会科学者として一番言いたいことかもしれない。

 

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(翻訳)ドルの覇権とその終わり
-アメリカはなぜ中国との戦争に向かっているのか-

*以下はこのスレッドの翻訳です。ちょうど知りたかったときに知りたかったことが書いてあってとてもありがたかったので日本語にしました。皆さんのお役にも立てば幸いです。

アメリカが今後数年以内の中国との戦争に向けて突き進んでいることが日に日に明らかになってきています。

しかし、その理由を理解するためには、まず、アメリカが今日のような世界的な金融大国になった経緯を理解する必要があるでしょう。🧵

第2次世界大戦で世界が荒廃していたとき、アメリカは、全く無傷で、しかも世界に残されていた全産業生産能力の半分を手にして闊歩していました。

しかし、問題がありました。荒廃した同盟国は、復興のために輸出されるアメリカ製品に対して支払いを行う手立てをほとんど持っていなかったのです。

この問題に対処するため、アメリカはIMFと世界銀行を設立し、一方的な拒否権を通じて、古い植民地勢力圏、とりわけ大英帝国の解体に乗り出し、ヨーロッパの再軍事化を防ぐと同時に、アメリカ製品の輸出への道を開きました。 

この2つの機関をテコに、アメリカに途方もなく大きい権限を集中させるグローバル金融の枠組が創出され、アメリカは多国間主義を装って世界の債権者としての地位を固め、世界の基軸通貨としてのドルの地位を確立しました。 

その後、世界各地で勃発する国家主権をめぐる闘争を暴力的に抑え込むための巨額の軍事支出によって、アメリカの財政赤字が増加を始め、海外市場におけるアメリカ資本拡大の障害と見られるようになりました。

 

 

 

貿易赤字が膨らんだ結果、金(ゴールド)がヨーロッパに逆流し始めると、アメリカはドルと金のリンクを断ち切りました(1971年)。ドルが暴落すれば、黒字国の輸出産業が壊滅的な打撃を受けるため、当時はどの国もアメリカの財政上のハッタリを暴こうとはしませんでした。

 

これにより、日本、ドイツ、イギリスのような共同帝国主義の従属国には一つの選択肢しかなくなりました。余剰のドルをアメリカに還流して米国債(アメリカという事業体に対して債務の実行を迫るいかなる手段も持たない無益な非公式借用書です)を買うことです。

 

なぜ、これらの債権国は、余剰ドルを使って、フォードやGMといったアメリカの大企業を買収したり、郵政公社や社会保障制度を解体したりしなかったのでしょうか。彼らとアメリカの関係は対等ではなく、アメリカが支配的地位を利用して自らに都合のよい条件を押し付けたからです。

 

これにより、世界の基軸通貨としてのドルの地位はさらに強固になり、アメリカは財政赤字や貿易赤字を出してもさしあたり何の悪影響も被らないという途方もない特権を獲得した上、戦争を続けることも容易になりました。金(ゴールド)の裏付けなしの支出が可能になったからです。

結果、ドルのリサイクルは、国内産業に投資するより資本を輸出した方が多くの収益が得られるという事態を生み、産業資本は金融資本に取って代わられました。金融資本は残っていた製造業から貪欲に資産を奪い賃料を搾り取ることで増殖していきました。

ドルのリサイクルは今度はFRBの低金利政策の維持を可能にし、米国の投資家に巨額の借金のインセンティブを与えました。彼らは、信用における独占的な地位を利用して、借りた資金を、資本を切実に必要としている途上国に貸し付けました。

西側の資本は、容易に債務不履行に陥る仕組みの高利融資として途上国に提供され、各国は「ワシントン・コンセンサス」(労働者に敵対的な緊縮策)の実施を余儀なくされました。その結果、途上国の政府は自国の労働者階級との歪んだ階級闘争を余儀なくされました。

複雑で不透明なメカニズムに見えるかもしれませんが、こうして強要された経済再編の究極のゴールは非常に単純です。それは、天然資源と労働力を周辺から中核へ、公正価格をはるかに下回る価格で永続的に吸い上げることにほかなりません。

 

 

 

 

このような周辺から中核への膨大な富の移転は部分的には不平等取引の利益/損失総額として記録されます。これは、アメリカの金融支配による為替レートの抑制によって周辺から搾取された価値の客観的な指標です。

 

ドルの覇権によって、金融階級は貿易収支や財政赤字を均衡させる義務から解放され、代わりに公共産業の民営化、不動産の独占、株式市場といった非生産的なレントシーキングに資金を注ぎ込むことができるようになりました。

 

そういうわけで、過去数十年にわたる米国の経済成長は、外国の中央銀行からの直接的な資金提供によるものだったのです。

しかし、これらのすべては中国とどう関係するのでしょうか。中国は何をしていて、アメリカの金融界は何をそれほど脅威と考えているのでしょうか。

 

1980年代、アメリカや西欧諸国の多くが、自国の労働者の力を奪いまた発展途上国の安価で豊富な労働力を利用するための手段として脱工業化したとき、中国は世界最大のそして最も安価な部類の労働力供給源でした。

ソ連の失敗が政治・経済両分野の急激で無計画な自由化をもたらしたのに対し、中国は中国共産党の支配と重要部門の国有企業による管理を強力に維持しながら、西側資本への管理された開放の道を歩みました。

 

 

その結果、ソ連が一時西側の金融植民地化となり、経済の解体・不当な買い叩きにあって生活水準の急落を経験したのに対し、中国は、巨大な生産基盤を築き上げ、生活水準を飛躍的に上昇させました。

 

しかし、国内産業を海外の安価な労働力に置き換える過程で、アメリカは自らの経済的覇権の手段を弱体化させるという過ちを犯しました。ドル覇権体制の安定性は、それが唯一の選択肢であるということに依存しています。ところが、アメリカはオルタナティヴの誕生に資金を提供してしまったのです。

 

中国の生産力と世界との経済的統合が高まるにつれ、中国の途上国への融資能力も高まりました。しかし、IMFや世界銀行の融資とは異なり、中国の貸し付けは公共事業として扱われ、ほぼ完全に国家の管理下に置かれます。

 

 

 

中国の国有銀行による政府間融資では、利益を生み出すことは要件とされません。また、中国の金融機関から融資を受けようとする国が構造調整を強いられることもなく、債務の再交渉や取り消しが行われることも珍しくないのです。

 

 

 

 

中国の台頭により、ソ連崩壊後初めて、外国資本への完全な従属か/残酷な孤立・攻撃かの二者択一を必要としない、途上国の真の発展への道筋ができたのです。

 

 

もし発展途上国が西側諸国を回避して基本レベルの自給自足経済を築き、必要な商品を自国通貨で他国と自由に取引することができれば、少数の裕福な帝国中心部と広大な搾取される周辺部という世界の二項対立は解消されるでしょう。

 

これが、中国の台頭がアメリカにとって存亡の危機である理由です。中国が軍事的に世界を支配し、イデオロギーを輸出し、すべての競争を排除することを目指しているためではありません。アメリカがそれらの全てを目指していて、かつ、中国がアメリカの金融独占に対する初めての目に見えるオルタナティブであるためなのです。

 

 

中国の孤立を狙う米国主導のキャンペーンはもう何年も前から続けられています。10年以上前に中国主導のオルタナティブの明確な兆候が現れたからですが、最近集中的に起きた歴史的な変化によって、戦争に向けたタイムラインが圧縮され始めています。

 

第一に、中国は2016年に購買力平価で調整したGDPでアメリカを抜いて最大の経済大国となっており、生のGDPでも10年以内にアメリカを抜くことが予想されます。付け加えれば、経済の過度の金融化により、アメリカのGDPは現時点ですでに不当に大きく算出されています。

 

 

第二に、中国とロシアの関係が日増しに接近しています。かつて超大国であったロシアは今では抜け殻と軽く見られる傾向がありますが、ウクライナにおけるNATOとの代理戦争における生産性の高さは、ロシア経済の真の力が著しく過小評価されていることを示しています。

 

第三に、中国の軍事力は急速にアメリカと拮抗する状況に近づいています。特に、アメリカ主導の攻撃を撃退する際に発揮されるであろう中国の防衛上の優位性は著しく、アメリカに太平洋全域への海軍力拡大を企図させる要因となっています。

第四に、BRICS、the SCO(上海協力機構)、the BRI(一帯一路)は、自ら決めたやり方での工業化および公共インフラへの投資ーつまり、緊縮財政を強いることも依存を助長することもないーに焦点を当てた組織であり、いずれも途上国の間で加速度的に関心を集めています。

 

 

 

 

そして何より決定的なのは、BRICS諸国が米ドルに代わる貿易通貨としてバスケット通貨を導入し、新規加盟国もこの方式に参加できる道を開き始めていることです。より公平な新しい世界通貨システムへの移行は、一直線に進むものではないでしょうが。

 

 

 

 

中国を孤立させようとするアメリカの計画を十二分に理解している中国共産党は、10年以上前からアメリカ経済からの切り離しという壮大なプロセスを着実に進めてきましたが、近時アメリカによる喧嘩腰の貿易関税と制裁が始まって以来、切り離しの努力は加速しています。

 

 

 

 

オルタナティブの優勢によるドル覇権の終了は、アメリカが国内そしてアメリカ帝国を支える800近くの海外軍事基地に赤字支出ができるという途方もない特権を持つ時代の終わりを意味します。その影響は前例がないほど甚大なものとなるでしょう。

 

皮肉なことに、世界は、1944年のブレトンウッズでジョン・メイナード・ケインズが一国の支配を受けない超国家的通貨システムとして提唱したバンコール・システムに回帰してきたようです。それに代わってドルが勝利を収めたことで、80年に渡るドルの覇権がもたらされたのですが。

 

アメリカは今、中国がルールに基づく国際秩序を乱し、西側の価値観を裏切っていると非難しています。しかしそこでは「ルール」とは発展途上国からの搾取の永続であり、「価値」とは人間の幸福を犠牲にした私的利益の追求だということが省略されています。

アメリカが中国の台頭に歯止めをかけるチャンスは、急速に失われつつあります。

しかし、これは本当に米国が中国との軍事的対決のための土台を築いていることを意味するのでしょうか。そして、もしこの対決が避けられないとしたら、アメリカはどのように進めようとしているのでしょうか?

*Part2, Part3と続くようですが、当面続きを翻訳する予定はありません。

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戦時下日記

戦時下日記(5) 岸田政権、イーロン・マスクとタッカー・カールソン

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12月20日(火)政権支持率低下

岸田内閣の支持率低迷。防衛費増額のための増税(あくまで「増税」)「支持しない」が64.9%。支持率は33.1%(共同通信)。

支持率が低迷するのは分かるが、現政権が今の日本が選択可能な政権としては比較的ましだという気持ちは変わらない。

テレビで子育て中の女性が「子育て支援はなかなか決まらなくて、防衛費はあっという間に決まる」と嘆いていて、もっともだが、「あっという間に決まる」のは、選択の余地がないからだろう。

リベラル系の論客の人たちが軍拡について岸田首相を批判しているのを見ると「本当に岸田首相の判断で左右できる問題だと思っているのか? アホなのか?」と言いたい気持ちを抑えられない(言ってる)。

現今の情勢においてアメリカが押し付けてくるものを日本が拒否できるはずがない(ドイツ関連で前回も少し書きました)。

強くて抵抗できないからというより、覇権が崩れかかって、異常に不安定になっているからだ。

いまは静かにアメリカの覇権が崩れ落ちていくのを待つしかないと思う。そのときとはおそらく自民党政権が終わるときだが、それまで自民党にできることはあまりない。「そのとき」に生じる被害をこれ以上大きくしないというのがせいぜいで、そういう仕事で頼りになるのは(日本の場合)政治家というよりは官僚だから、官僚に任せられる人がいい。

こんなとき、目立ちたがり屋のお調子者がトップに立つと何をするかというと、たぶん、日本を売るだろう。何かやったフリをして目立ちたければ、必要以上にアメリカのいうことを聞いて、褒めてもらう以外にないからだ(何人かの顔が思い浮かぶ)。

だから、今は岸田政権でいいと私は思う。

志のある人には、自民党を倒すことなど考えなくていいから、その先を見据えて力を蓄えてほしい。

・・・

とはいえ、私もここまでクールな見方をするようになったのはごく最近だ。ウクライナについて西側の様子がおかしいので焦って勉強し、開戦までの経緯、とくにドンバスの内戦について知ったことが大きい。

古き良きアメリカも、新しくて魅力的なアメリカも今はもうない。アメリカがこの先、国家として成り立っていけるのかも疑わしいと思う。

12月21日(水)イスラエル

数日前からイスラエルがシリアを爆撃していることが報道されている。イスラエルはいつもシリアかパレスチナを爆撃しているのだ。

イスラエルはネオナチ的勢力が非常に強くなっている様子。米英は、中国やロシアのような統制の利いた社会を怖がるけれど、今のウクライナ、イスラエルに出現しているような極端な民族差別主義は平然と受け入れられるみたいで興味深い。

多分、家族システムと関係があると思う。

12月22日(木)プーチン、メドヴェージェフ、ゼレンスキー

ここ2日くらいの間に、プーチンがベラルーシを訪問してルカシェンコに会い、メドヴェージェフは中国を訪問して習近平に会い、ゼレンスキーはワシントンを訪問している。

まもなく非常に激しい攻撃が行われる兆しでは、という見立てをいくつか見る。

違いない。

中国の報道(環球時報とかCGTNとか)を見ていると、中国が関与しているかどうかに関わらず「誰が誰に会った」「誰と誰が会談した」というニュースがとても多い。それが政治というものなのだろう。  

12月23日(金)雪

天気予報に反して広島市内でも大雪。

犬と一緒だと雪の日は最高に楽しい。「雪」(雪やこんこ♪)の歌詞は本当で、ほとんどの犬は大喜びでかけ回っている。犬は決して転ばないけど(四本足は偉大なのだ)、人間はちょっと危ない。

12月26日(月)アメリカの平均余命

アメリカで平均余命が激しく下がっている。何が起きているのか。

 

ちなみに乳児死亡率はほぼ横ばいだった。

12月29日(木)

数日前にヘルソンへの攻撃が強まっているとNHKが報道していたが、とにかく攻撃が強まっているらしい。Kievでも、ほかでも。

12月30日(金)イーロン・マスクとタッカー・カールソン

Twitterファイル(最新のはこれ)は、twitterやその他SNSを通じた米国の情報操作についていろいろ暴露してくれているけど、イーロン・マスクがそれをやらせているという事実をどう考えていいのかよく分からなかった。

あと、FOXニュースのタッカー・カールソンが、私が独立系メディアから集めているような情報をテレビでバンバン報道していて、これもどう理解したらいいのか分からなかった。

今でもよくは分からないのだが、参考になる意見を目にしたので、書き留めておく。

手の込んだプロパガンダだということは間違いなさそう。

米国の右派は数年おきにディープ·ステートと密接なつながりを持つ億万長者の中からディープステートと戦うポピュリストのヒーローの役目を演じる者を世に送り出す。以前それはトランプだった。今はマスクだ。しばらくすれば別の誰かに変わるだろう。しかしそれは誰かが戦っているように見せかけるためのショーに過ぎない。

トランプとマスクはどちらもヒラリー·クリントンが共和党支持者を激昂させたのと全く同じやり方で対立する党派を大騒ぎさせ、激怒させる。実際には、マスク、トランプ、クリントンはみな民主党と共和党の双方が力を合わせて守っている既得権層に仕えているのだ。

すべては、自分たちの苦境に全く関心を示さない支配者に怒りを募らせているアメリカの不満分子に対して、彼らを代表して戦っている者がいると見せかけるための演出にすぎない。拍手喝采するヒーローを与えておけ、そうすれば奴らは自ら立ち上がって戦うことはない。

一方の党派を代表するピカピカの飾り物に怒りを向けさせることによって、そのピカピカの飾り物に対する支持ないし不支持という形で人々の関心を党派対立に繋ぎ止める。こうして全ての人を主流派の世界観の中に閉じ込めるのだ。

彼らは批判を封じ込めるだけでなく、批判の封じ込めに対する批判も封じ込める。それがAOC[Alexandria Ocasio-Cortez:民主党の政治家]/Bernie[Sanders]/TYT[the Young Turks:進歩派のニュースショー]であり、MAGA[Make America Great Again:共和党内のトランプ派]/タッカー・カールソン/マスクの役割だ。彼らは既得権層と戦っているフリをしながら、実際にはそれを守っているのだ。

イーロン・マスクについてはMintPress Newsのこの記事を読むのがよさそう(私はまだ読んでいません)。

「イーロン・マスクはアウトサイダーの反逆者ではない。ペンタゴンの強力な請負人だ」

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戦時下日記

戦時下日記(4) 南米、メルケル、W杯

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12月4日(日)「陸自沖縄部隊 大規模化 台湾有事に備え」(中国新聞1面トップ)

日本が事実上アメリカの属国である‥というか、独自の軍事・外交政策を展開できる立場にないということは、国内外で普通に知られている。

私が外国人としてこのニュースに接したとしたら、「ああ、アメリカは台湾で何か仕掛ける計画で、日本にその準備をさせているんだな」と思うだろう。

そうなのか?

12月6日(火)アルゼンチンでクーデター?

アルゼンチン副大統領クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Elisabet Fernández de Kirchner)に有罪判決

元大統領である夫の後を受けて大統領を2期務めた後の副大統領職。貧困層や若者に人気のある左派の政治家。今年(2022年)8月に汚職の罪で訴追され、9月に暗殺未遂に遭い、今日有罪判決+終身公職追放。

イムラン・カーンのケースに酷似。

12月7日(水)今度はペルー

今度はペルーで大統領罷免。

暗殺未遂こそないけれど、それ以外の事態の推移はパキスタンと瓜二つ。アメリカは即座に歓迎を表明している。

消化しきれないほど次々と事件が起きるのはワールドカップ開催中だからか?

(スポーツイベントにクーデターは付き物で、2014年のウクライナのクーデターもソチオリンピック開催中だった。)

ドイツではクーデターを計画したとされる25人が逮捕とか。
これが何を意味しているのか私にはまだよく分からない。

12月9日(金)メルケル発言

Die Zeit に載ったメルケル元首相のインタビューにプーチン大統領が反応。

メルケルは何と「ミンスク合意はウクライナの戦力を強化するための時間稼ぎだった」と言っているのだ(同趣旨の発言は先に12月1日のder Spiegelに載ったそう。私は読んでいません)。

 *ミンスク合意についてはこちらの「解説・資料編」をご覧ください。

プーチンの発言はこんな感じ。

正直、全く予想外だった。非常にがっかりしている。信頼はほとんどゼロになってしまった。どうやって、何を交渉すればいいのか。彼らと交渉など成り立つのか。守られる保証はどこにある?

https://twitter.com/AZgeopolitics/status/1601240676905078785

メルケルの発言に関しては、真意が伝わっていないという意見がある。

メルケルは真にドンバスとウクライナの関係修復を目指してミンスク合意に取り組んだが、結果的にうまくいかなかったので、取り繕うために(ドイツではメルケルへの風当たりはかなり強いらしい)、ドイツのズデーテン領有を認めた1938年のミュンヘン合意に関してチェンバレン英首相が使った「時間稼ぎだった」という言い訳を持ち出したのだ、と。

そうかもしれないけど、うかつだ。

その意見を聞いてからもう一度該当部分を読んでも、やっぱり「戦力強化のため」と言っていることは間違いなく、ロシア側から見ればプーチンのような捉え方にならざるを得ないと思う。

メルケルが信用できないなら、他に一体誰を信用したらいいのだろう?

12月10日(土)引き続きメルケル

しかし、そういえばトッドがメルケルをすごく批判していたことがあったのを思い出し、引っ張り出してみた。

まず2014年6月に出たインタビュー。ウクライナのクーデター(2014年2月)後の時期。

いつの日か、歴史家たちがシュレーダーからメルケルへの大転換に言及することになるでしょうか。

・・

現在の局面は、ドイツ外相シュタインマイアーのウクライナ訪問から始まりました。ウクライナの首都キエフにポーランド外相シコルスキーも姿を見せたということが、シュタインマイアーの任務がアグレッシブなものであったことの証です。

・・あのキエフ訪問がわれわれの目に明らかにしたのは、ドイツの新たなパワー外交であり、その中期的目標はたぶん、ウクライナ(統一されているか、分裂しているかは二義的な問題です)を安い労働力市場として、自らの経済的影響ゾーンに併合することです。2003年のシュレーダーならば、絶対にやらなかったであろうオペレーションです。

『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書、2015)110−111頁

 こんなことも言っている。

公言されにくい真実をずばり言いましょう。今日、アメリカはドイツに対するコントロールを失ってしまって、そのことが露見しないようにウクライナでドイツに追随しているのです。

117頁

次は2014年8月。

ドイツから来る信号をキャッチしてみると、それはさまざまで、互いに矛盾している。

ときには、ドイツはむしろ平和主義的で、控えめで、協調路線をとっているように感じられる。ときには、それと真逆に、先頭に立ってロシアに対する異議申し立てと対決姿勢を引っ張っているように見える。

この強硬路線が日々力を増してきている。かつて、ドイツ外相のシュタインマイアーはキエフを訪れる際、フランス外相ファビウスやポーランド外相シコルスキーと一緒に行ったものだ。ところが、メルケルは今や単独で、新たな保護領ともいえるウクライナを訪問する。

ドイツが突出してきたのはこの対立においてだけではない。ここ6ヶ月間、最近の数週間も含めてのことだが、ウクライナの平原でロシアを相手にすでに潜在的紛争状態に入っているというのに、メルケルはヨーロッパ委員会の委員長に、元ルクセンブルク首相のジャン=クロード・ユンケルを据えた。ちょっと信じがたい不作法さをもって、強い反対の意思を明らかにしていたキャメロンのイギリスを屈辱的な目に遭わせたのだ。

さらに途方もないことに、アメリカによるスパイ行為の問題を使って、アメリカにもぶつかり始めた。冷戦時代以来のアメリカとドイツの諜報活動の複雑な絡み合いを知っている者にとっては、まったく信じがたい。

24-25頁

ドイツは現下の国際的危機において複合的でアンビヴァレントだが、それでも推進力となる役割を演じている。しばしばドイツというネイションは平和的に見える。が、それでいて、ドイツにコントロールされているヨーロッパは攻撃的に見える。あるいはその逆もある。ドイツには今や二つの顔があるわけだ。・・

目下私は容赦のない語り方をしていると自覚しているけれども、今、ヨーロッパはロシアとの戦争に瀬戸際にいるのであって、われわれはもはや礼儀正しく穏やかでいるだけの時間に恵まれていない。言語と文化とアイデンティティにおいてロシア系である人びとがウクライナ東部で攻撃されており、その攻撃はEUの是認と支持と、そしてすでにおそらくは武器でもって実行されている。

ロシアは自国が事実上ドイツとの戦争状態にあることを知っていると思う。

32-33頁

これを読み、2014年の時点でトッドには全部見えていたのだなあとしみじみ思うと同時に(ただし本人も認めているとおり米英の見方は甘かった)分かったことがある。 

私はこの戦争を、米英とロシアの代理戦争だと思っていたが、それだけではなくて、アメリカがロシアをダシにしてドイツを屈服させる‥‥というか、ドイツがロシアと組んでアメリカに対抗してくる可能性を摘みとるための戦争でもあるのだ。

戦争の過程を見ていて、「ドイツも日本と同じようにアメリカの言うなりなんだなあ‥‥」と思うことが多かったのだが、違った。もともと言うなりだったのではなくて、この戦争を通じて踏み絵を踏まされているのだ。

EU委員長のフォン・デア・ライエンはドイツ人。
メルケル政権で一貫して閣僚を務め、一番肝心な時期(2013年12月ー2019年7月)に国防大臣だった人間だ。

彼女がおそらく「ドイツにコントロールされている攻撃的なヨーロッパ」を代表している。米・NATOとEUはもうチキンレースなのか何なのかよく分からない。

一方、ショルツの顔を見ていると、何をされるか分からないのであからさまにアメリカに対立することはできないが、覇権が崩れたときに備えて布石は打っておきたい、というような感じか。

ちょっと前まではドイツが何とかしてくれないかなあ、とか思っていたが、しばらくは何もできないだろう(ようやく分かってきた)。

今のアメリカでは本当に何をされるか分からない。もちろん、日本が刃向かうそぶりを見せた場合も同じだ。

ところで、トッドは日本についても語っている。(2014年8月)

〔米・独の衝突以外の〕もう一つのシナリオは、ロシア・中国・インドが大陸でブロックを成し、欧米・西洋ブロックに対抗するというシナリオだろう。しかし、このユーラシア大陸ブロックは、日本を加えなければ機能しないだろう。このブロックを西洋のテクノロシーのレベルに引き上げることができるのは日本だけだから。

しかし、日本は今後どうするだろうか?今のところ、日本はドイツよりもアメリカに対して忠誠的である。しかしながら、日本は西洋諸国間の昔からの諍いにうんざりするかもしれない。

現在起こっている衝突が日本のロシアとの接近を停止させている。ところが、エネルギー的、軍事的観点から見て、日本にとってロシアとの接近はまったく論理的なのであって、安倍首相が選択した新たな政治方針の重要な要素でもある。ここにアメリカにとってのもう一つのリスクがあり、これもまた、ドイツが最近アグレッシブになったことから派生してきている。

71-72頁

たしかに、安倍元首相はロシアに接近する姿勢を見せた人物だった。

12月11日(日)ロシア国内にドローン攻撃

しばらく前(12月6日頃)にウクライナがロシア国内の軍事基地などにドローン攻撃を仕掛け始めたという報道があり、そんな重大なことをアメリカの支持なしにやることはないだろうと思っていたが、それを裏付ける報道(「アメリカの黙認があった」旨)。

ちょっといい加減にしてほしいと思う(無駄)。

これを受けてのことなのか、ストルテンベルクが、ウクライナの戦況がコントロール不能に陥っていてNATOとロシアの全面戦争もありうる、と発言したとか。

だからやめようという話ではないところがすごい。

12月15日(木)

W杯フランス・モロッコ戦。

どっちが勝っても(というか負けても)パリは暴動だ、と楽しみにしていたが、今のところそういうことはないようだ。 

12月17日(金)再びインファンティーノ、ペルー続報

W杯の決勝でゼレンスキーのビデオ・メッセージを映すというオファーをFIFAが断ったという。

やはりインファンティーノが偉いのではないか?

ペルーは抗議運動が続いて大ごとになっている。南米では連帯の動きも。確かに、南米の左派政権にとってはアメリカからの宣戦布告のように見えるだろう。

新大統領が次の大統領選挙の前倒しを求めているという報道があるが、カスティージョの公職追放解除を言わないと意味がない。引き続き注目。

12月19日(月)国連決議2種

今日のニュースではないが、国連総会の決議

「ナチスの英雄化、さらにはネオナチ、民族差別、人種差別、排他主義、およびこれらに関連した非寛容的態度の悪化を促す全ての現代的形態に対する戦い」と題する決議案が賛成多数で可決(12月16日)。

この決議案は例年、賛成多数で可決されている。

ということなので、日本が毎年核兵器廃絶決議案を出しているのと同じで、ロシアが毎年提出しているものなのだと思う。

内容は、「第二次世界大戦期に行われた人道に対する犯罪、及び戦争犯罪を否定し、大戦結果の改ざん阻を目的とし、法律や教育の分野において各国に人権に関する国際的義務に準ずる形で具体的な措置を講じることを要求するもの」。

今年は「ロシアが特別軍事作戦の正当化への利用を狙っている」ということで日本、ドイツ、イタリアを含む西側諸国が反対した。

国連次席大使によると、旧枢軸国がこの決議案に反対するのは国連誕生以来、初めてだという。

12月14日には「新しい国際経済秩序に向けて」という文書の決議が行われているのだが(これも1974年から毎年決議されているとか)、この二つの決議の結果を見比べると面白い。

まず反ナチ決議。

こっちが「新たな国際経済秩序」。 

これを見ていると、ウクライナ戦争というのは、南北朝の乱とか応仁の乱と一緒で(今ちょっと勉強してるので)、国際社会の深層部で何らかの地殻変動が起きていることを示す現象であって、関係者にとっての勝敗等とは全く無関係に、それが終わると新しい世界が生まれ出ている、というようなものなのかもな、という気がしてくる。

いまW杯の決勝(アルゼンチン VS フランス)を見ながら書いていて、試合が終わったところ。

すばらしいゲームの末のアルゼンチンの勝利。
将来の何かの暗示であるといい。

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戦時下日記(3) インファンティーノ、ウクライナ破壊、台湾選挙、中国デモ

11月20日(日) インファンティーノ

明日からワールドカップが始まる。

ここに来てヨーロッパの各種機関や個人がカタールの人権侵害がどうのとか言っているのは見苦しい。とくに同性愛が違法な件。そんなのすぐに変えられるはずがない。

インファンティーノのコメントがその雑な感じも含めてとてもカッコよかった。

https://www.liverpoolecho.co.uk/sport/football/football-news/gianni-infantino-speech-world-cup-25556788

西洋人は3000年間謝罪してから説教しろ、というところもよかったが、多分日本語で紹介されていなくて感銘を受けたのは次の部分。

批判は理解できない。私たちがやるべきことは、彼らの役に立つこと、教育に投資をし、よりよい将来と希望をもたらすことだ。私たちはみな自分たち自身を教育するべきなのだ。もちろん多くのことは完全ではない。しかし改革や変化には時間がかかるものだ。

こういう一方的な説教はただの偽善だと思う。なぜ誰も2016年からこれまでの進歩に目を向けないのか分からない。

11月24日(木) ウクライナ破壊

ロシア軍によるウクライナへの攻撃が本気で激しくなっている様子が、私の乏しい情報網からも感じ取れる。それなのに停戦に向けた動きが全く見えない。

その通りなんだろうと思ったスレッド(下に抜粋の翻訳を付ける)。

①今日、ウクライナに残っていた4つの原子力発電所のうちの3つがウクライナのエネルギー網の中核を狙ったロシアの攻撃の結果停止されました。人口300万の都市、キエフの80%は現在電力、水、暖房がありません。では、なぜ交渉が始まらないのでしょうか。

・・

③これらの攻撃は、1年で最も寒い時期に突入しようとしているウクライナにとって、極めて破壊的なものです。重要なインフラ、特にウクライナのエネルギー網の中核を標的とした攻撃は、ウクライナ政府を交渉のテーブルにつかせようとする新しい戦略の一部であるように見えます

・・ 

⑥現地の状況に鑑みると、いまウクライナ政府にできる唯一の合理的な行動はロシア政府との交渉のテーブルにつき、停戦合意の条件を吟味することであるように思えます。何がそれを妨げているのでしょうか?

⑦2つのことがあります。第1に、バイデン政権の強硬な「対ロシア戦争推進派」がまだ決定権を握っている。今月初めに党内の進歩派がごく控えめな言葉遣いで対話路線を提案する書簡を書きましたが、バイデン政権によって1日も立たないうちに潰されました。

⑧そして第2に、ウクライナ政府は完全にナチスに乗っ取られているため、交渉に向けた一歩はどんなものであってもゼレンスキーの最後となる可能性が高い。

ゼレンスキーが自らの意思に反して行動しているといっているわけではありません。単に交渉という選択肢はないというだけです。

⑨ナチの動機がはっきりしているのに対し、アメリカが紛争を長引かせようとする意図は最近になってようやく明らかになってきました:
ーロシアとヨーロッパの間のエネルギー網を恒久的に断絶し、ヨーロッパをアメリカのガスに依存させること、
ーアメリカの新しい戦争テクノロジーをテストする実験場として機能させること。

⑩シリアに対してと同様、アメリカはウクライナを破綻国家に転落させる戦略に満足しているように見えます。戦略が成功すれば、絶望し避難を余儀なくされた大量の人々がヨーロッパに流入し、その巨大な波は今世紀に起きたどんな危機も小さく見せるでしょう。

⑪ウクライナの代理戦争とその影響は、アメリカがその「同盟国」に残す選択肢がどのようなものかを完璧に示しています:完全な服従か、失敗した帝国の崩壊を遅らせようとする哀れな企てにおける安い人質として犠牲に差し出されるかのいずれかです。

11月26日(土)台湾統一地方選挙

台湾の統一地方選挙で民進党が敗北。地方選挙ではあるが、蔡英文自身が「民主主義のための投票」として、中国に対する結束した姿勢を示すよう呼びかけていた。

ペロシの訪台とか台湾の人たちはOKなのか?、と思っていたが、これが答えかも。

11月29日(火)中国デモ

中国のデモについてのニュースがBBCやNHKでも多くなっている。

現在の(とくに若者人口が減り気味の)中国で、コロナ対応程度のことで打倒習近平、打倒共産党政権の動きが出てくるとは考えにくい。

日本の報道は中国のニュースすら英米のソースを垂れ流しているようだ。中国についてはSNSでかなり確からしい情報が手に入るのでありがたい。

扇動しているのはイギリスなのかアメリカなのか知らないが、「これ以上がっかりさせないで‥」という気持ちがつのる。

でもがまん。個人的な願望は受け流し、科学者の目で見つめるのだ。

12月3日(土) 

こうして日記などつけていると、フェイドアウトしていくニュースの存在を意識するようになる。

ノルド・ストリーム2については、スウェーデンが調査結果を報告するとか言っていたような気がしたが、続報はなし。

ポーランドへのミサイルの件も立ち消えた。

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戦時下日記

戦時下日記(11月7日-20日)

11月7日(月)

ノルド・ストリームの続報。

ロシアの対外情報庁長官セルゲイ・ナルイシキン(Sergey Naryshkin)が、トラス元英首相からブリンケン米国務長官へのメール(”It’s done”)を「間接的に」確認したと述べている。この「間接的に」とは、中国の諜報部門経由という意味だろう、というのがKim Dotcom氏の見立て。

ロシアからの報復については「最も懸命なやり方は何もしないこと」と指摘していて深く納得した。

なぜならロシアは勝っているからだ。メディアは報道しないが独立系の軍事専門家たちは、軍備の再増強を経て行われるこの冬の攻撃によってウクライナは倒れるだろうという意見で一致している。アメリカとNATOがどれだけの武器を追加でウクライナ軍に送ったとしても。

となればノルドストリームへの最も効果的な報復は報復しないことだ。誰がやったかはみな知っている。非西側諸国の目にはロシアと中国はますます思慮深く理性的なアクターに見えている。BRICSとその同盟国は支持を獲得する。新たな財政システムを伴う多元的秩序の誕生は不可避に見える。

ロシアは「報復を発表する」とか言いながら結局何もしていないようなので、その説明にもなっている。

11月10日(木)

アメリカのシリア=イラク国境への爆撃で民間人の死者30人。石油を運搬する船とか。

詳しく調べていないが、アメリカはシリアの資源(石油、ガス、小麦)の大半を略奪し続けていると言われているので、その関連か。

11月14日(月)

イスラエルがシリアに爆撃。

11月15日(火)

戦時下日記を書き始めたら「もう新しい秩序が始まっているのだ」という理解がやってきて、早くもやる気が低下していたところに大きなニュース。

13日のイスタンブールでの「テロ」とされる爆発事件(6人死亡、80人以上負傷)。直前にエルドアンがウクライナ戦争に関するアメリカの態度を非難するような発言をしていたので、CIAの関与を推測する声が聞かれたが、「まさかトルコほどの国に対してそれはないんじゃ」と思っていた。

だがしかし、今日のトルコ内務大臣のコメント。

私たちはこの事件がどのように仕組まれたか分かっています。この事件がどこから仕組まれたかも分かっています。この事件が伝えようとしているメッセージを理解しています。私たちはアメリカ大使の哀悼を受け入れません。拒絶します。

https://www.aa.com.tr/en/turkiye/turkiye-does-not-accept-us-condolence-over-istanbul-terrorist-attack-interior-minister-soylu/2737533

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先週末にロシア軍がヘルソン州の州都ヘルソンから軍を撤退させたニュースがあり、いろいろ総合すると、川向こうの州都ヘルソンに兵を置いておくことには物資の補給などの観点から不安があるのでロシア兵に多数の死者を出さないために(プーチン大統領が一番恐れているのはそれ、という意見に私は納得している)とりあえず一旦引いた、というような話に見える。

それが正しいかどうかはともかく、趣旨がまったく分からない状態で、ロシアが正式に発表して兵を引いた事実を、まるでウクライナの勝利であるかのように報道するBBCやらNHKには驚く。新聞(私が見てるのは中国新聞だけ)にも批判精神はまったく見られない。

でもまあずっとそうだったんだろうな~。
太平洋戦争中の日本の人たちの気持ちが今わかる。

一部の人たちは、ウソであることがはっきり分かっている。
だからといって何ができるわけでないことも分かっている。

それ以外の人たちも、全面的に信じているわけではないが、真実を知ったからってどうなるものでもないから、何となく信じているような顔をして暮らしている。

だから戦後になっていろいろウソだったことが分かり、戦勝国の方針にしたがって教えられ報道される内容がガラリと変わっても(そっちが本当というわけでもないのだが)、「やっぱりそうか」という感じで、全然対応できてしまうのだ。

衝撃を受けるのは生真面目な子供たちだけ、という。

今回、それが日本だけのことではないと分かったのがとにかく収穫だった。

11月16日(水)

ポーランド側の国境地帯にミサイルが着弾と報道。
ウクライナのミサイルである様子。

11月18日(金)

トッドが「ポーランドは要注意」と言っていたのを思い出したが、とりあえずアメリカ・NATOは大ごとになるのを避けようとしているのが感じられる。

しかし、ウクライナ政府は、ウクライナ国内の戦況についてはどんな虚偽・誇張を言っても許されるのに、ウクライナから西に戦線拡大の気配が見られた瞬間にはっきり否定されるという状況をどう感じるのだろうか。

ウクライナはどうなってもいいけど、他はダメ、という明確な意思表示を。

11月19日(土)

2014年のウクライナ東部上空でのマレーシア航空旅客機撃墜の判決。

1994年に発生したエストニア号沈没事件(NATO軍の船との誤衝突が隠蔽された強い疑いがあるという)との類似性を指摘する声を聞いた。

エストニア号の調査に深く関わったスウェーデンはまもなくノルド・ストリームの関連の報告書を出すとか。どういうクレンジングが行われるのか。楽しみ。

今回のもう一つの収穫は、ヨーロッパ各国も相当にアメリカの「ポチ」であるとわかったこと。全然よいことではないけれど、真実を知るのはよいことだ。

11月20日(日)

イスラエルがシリアに今週二度目の爆撃。

しかし(?)アメリカが現在関与している最低最悪の戦争はイエメンなのだという(Scott Horton情報)。ウクライナよりひどいという意味だ。今度調べよう。

広島では葉っぱの大きいモミジをよく見かける。もみじまんじゅうのモミジはこっちなのかも。

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戦時下日記

戦時下日記(10月26日-11月5日)

ノルドストリーム2爆破のニュースの頃から、「これはもう戦時下だなー」と感じるようになった。そう遠くない将来に自分たちも巻き込まれずにはいないだろう。何かは分からないが、単に物価が上がるとかいうだけでない何かがやってくるだろう。なにしろアメリカがロシアに戦争を仕掛けているのだから。

表立って語られることがあまりにも少ないので、この話を持ち出そうとすると、なんかこう「不都合な真実を暴く!」みたいなノリになってしまいがちなのだが、そういうことではないのです。ただ、みんなで迎えるであろう近未来に関わるこれほど大きな出来事が、みんなの話題として共有されないのはなんか変だし、もったいなくないか?とも思うのだ。

そんなわけで、私自身の備忘も兼ねて、日記という形で、戦争の日々をおしゃべりしてみることにした。私は口数は少ない。だから日記も短いし、日記だから出典なども適当だ(積極的に嘘をつくことはしません)。

自分にとっても、こんなものを読もうと思う奇特などなたかにとっても、日々を心穏やかに過ごす役に立ったらいいと思う。

10月26日(水)までのうろおぼえ

ノルドストリーム2の破壊が報道されたのが9月末。スウェーデンが「機微性が高すぎる」という理由でドイツやデンマークとの調査結果の共有を拒否したというリーク報道があって以来情報が途絶えているので、アメリカが犯人なのだろう。

10月26日(水)

アメリカの民主党員の数人がウクライナ戦争への対処方針の変更(強硬路線からロシアとの対話路線へ)を提案する書簡をバイデンに手渡したという報道が昨日くらいにあって「お、ちょっといいニュースかも?」と思ったが、今日にはもう撤回されていた。理由は「スタッフのミス」。

ロシアが「汚い爆弾」をウクライナが使うおそれがあると言っている。ロシアは何か情報を掴んでいるのだろうと思うが、西側は取り合わないいつものパターン。

公園でウグイスを見かける。春にきれいに鳴いているときにはいくら探しても見えないが、秋冬には平地に出てくるのだそうだ。

10月27日(木)

イスラエルがダマスカス(シリア)を空爆。この一週間で3回目とか。シリアでもイラクでもパレスチナでも戦争は続いているらしい(他にもあるだろう)。

イスラエルは何をしても文句を言われなくてすごい。

10月31日(金) 

週末にロシアが穀物輸出の合意履行を停止するというニュースがあった。黒海艦隊へのテロ攻撃が理由。

黒海艦隊へテロ攻撃、それからノルドストリーム2のときも具体的な実行者はイギリス(背後にはもちろんアメリカ)というのがロシアの見解で、かなりの証拠があるもよう。

ブラジルではルラが勝利。

11月2日(水)

ノルドストリーム2爆破(by 英・米)に対する報復について土曜日にロシアが何か発表するとか。ちょっと楽しみ。

ロシアは穀物輸出の代わりに困っている国々に小麦を提供するとのこと。共同体家族のやり方だ。

中国も同じメンタリティで貧しい国を支援することがある。もちろん国家のやることだから全くの慈善事業ということはないだろうが、主体がロシアや中国だとNHKのアナウンサーが必ず「どういう(裏の)意図があるんでしょうか?」「〇〇の狙いがあるようです」とかいうやり取りをするのはゲスすぎる。教育上よくないのでやめてほしいといつも思う。

11月3日(木)

北朝鮮がやたらとミサイルを飛ばす。しかしそれは米韓日の軍事演習への反応だからやむを得ない。この時勢にアメリカが頻りに軍事演習をしていたら攻撃をおそれるのは当然だ。

この先アメリカの覇権が終わると北朝鮮が一方的に敵視されることもなくなり、それなりに発展していくのだろう。これがよいことでなくて何だろう。

夜にはイムラン・カーン銃撃のニュース。命に別状はないらしい。

銃撃の犯人は即座に誰かに射殺されたとか(実行犯2人のうち1人)。CIAの関与を疑わずにいられない。

パキスタンはいままさに移行期をくぐり抜けようとしているところで要注意、とトッドがどこかで言っていた。アフガニスタンもそうだけど、近代化の過程を目の当たりに見せてもらえるのだ。注目したい。

11月4日(金)

ロシア、穀物輸出の合意に復帰。エルドアンが偉い。

11月5日(土)

イムラン・カーンのニュースをNHKが全然報道しなくて驚く。

ブラジルでルラが勝って、イムラン・カーンは狙われても死なない。もう新しい世界になっているのだ、という気がする。

そう、ここ数日強く感じるのはそれだ。

ウクライナ危機を契機に、アメリカのしてきたことを中心に世界情勢を集中的に勉強し、あまりのことにショックを受けてあたふたとする時期を乗り越えてみたら、何のことはない。

もうすでにアメリカの覇権は終わり、新しい世界が生まれている。

アメリカや西側がそれを受け入れたくなくてジタバタしているだけなのだ。

そう思うと、もう、ただただ楽しみ。