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世界を学ぶ 戦時下日記

(翻訳)ドルの覇権とその終わり
-アメリカはなぜ中国との戦争に向かっているのか-

*以下はこのスレッドの翻訳です。ちょうど知りたかったときに知りたかったことが書いてあってとてもありがたかったので日本語にしました。皆さんのお役にも立てば幸いです。

アメリカが今後数年以内の中国との戦争に向けて突き進んでいることが日に日に明らかになってきています。

しかし、その理由を理解するためには、まず、アメリカが今日のような世界的な金融大国になった経緯を理解する必要があるでしょう。🧵

第2次世界大戦で世界が荒廃していたとき、アメリカは、全く無傷で、しかも世界に残されていた全産業生産能力の半分を手にして闊歩していました。

しかし、問題がありました。荒廃した同盟国は、復興のために輸出されるアメリカ製品に対して支払いを行う手立てをほとんど持っていなかったのです。

この問題に対処するため、アメリカはIMFと世界銀行を設立し、一方的な拒否権を通じて、古い植民地勢力圏、とりわけ大英帝国の解体に乗り出し、ヨーロッパの再軍事化を防ぐと同時に、アメリカ製品の輸出への道を開きました。 

この2つの機関をテコに、アメリカに途方もなく大きい権限を集中させるグローバル金融の枠組が創出され、アメリカは多国間主義を装って世界の債権者としての地位を固め、世界の基軸通貨としてのドルの地位を確立しました。 

その後、世界各地で勃発する国家主権をめぐる闘争を暴力的に抑え込むための巨額の軍事支出によって、アメリカの財政赤字が増加を始め、海外市場におけるアメリカ資本拡大の障害と見られるようになりました。

 

 

 

貿易赤字が膨らんだ結果、金(ゴールド)がヨーロッパに逆流し始めると、アメリカはドルと金のリンクを断ち切りました(1971年)。ドルが暴落すれば、黒字国の輸出産業が壊滅的な打撃を受けるため、当時はどの国もアメリカの財政上のハッタリを暴こうとはしませんでした。

 

これにより、日本、ドイツ、イギリスのような共同帝国主義の従属国には一つの選択肢しかなくなりました。余剰のドルをアメリカに還流して米国債(アメリカという事業体に対して債務の実行を迫るいかなる手段も持たない無益な非公式借用書です)を買うことです。

 

なぜ、これらの債権国は、余剰ドルを使って、フォードやGMといったアメリカの大企業を買収したり、郵政公社や社会保障制度を解体したりしなかったのでしょうか。彼らとアメリカの関係は対等ではなく、アメリカが支配的地位を利用して自らに都合のよい条件を押し付けたからです。

 

これにより、世界の基軸通貨としてのドルの地位はさらに強固になり、アメリカは財政赤字や貿易赤字を出してもさしあたり何の悪影響も被らないという途方もない特権を獲得した上、戦争を続けることも容易になりました。金(ゴールド)の裏付けなしの支出が可能になったからです。

結果、ドルのリサイクルは、国内産業に投資するより資本を輸出した方が多くの収益が得られるという事態を生み、産業資本は金融資本に取って代わられました。金融資本は残っていた製造業から貪欲に資産を奪い賃料を搾り取ることで増殖していきました。

ドルのリサイクルは今度はFRBの低金利政策の維持を可能にし、米国の投資家に巨額の借金のインセンティブを与えました。彼らは、信用における独占的な地位を利用して、借りた資金を、資本を切実に必要としている途上国に貸し付けました。

西側の資本は、容易に債務不履行に陥る仕組みの高利融資として途上国に提供され、各国は「ワシントン・コンセンサス」(労働者に敵対的な緊縮策)の実施を余儀なくされました。その結果、途上国の政府は自国の労働者階級との歪んだ階級闘争を余儀なくされました。

複雑で不透明なメカニズムに見えるかもしれませんが、こうして強要された経済再編の究極のゴールは非常に単純です。それは、天然資源と労働力を周辺から中核へ、公正価格をはるかに下回る価格で永続的に吸い上げることにほかなりません。

 

 

 

 

このような周辺から中核への膨大な富の移転は部分的には不平等取引の利益/損失総額として記録されます。これは、アメリカの金融支配による為替レートの抑制によって周辺から搾取された価値の客観的な指標です。

 

ドルの覇権によって、金融階級は貿易収支や財政赤字を均衡させる義務から解放され、代わりに公共産業の民営化、不動産の独占、株式市場といった非生産的なレントシーキングに資金を注ぎ込むことができるようになりました。

 

そういうわけで、過去数十年にわたる米国の経済成長は、外国の中央銀行からの直接的な資金提供によるものだったのです。

しかし、これらのすべては中国とどう関係するのでしょうか。中国は何をしていて、アメリカの金融界は何をそれほど脅威と考えているのでしょうか。

 

1980年代、アメリカや西欧諸国の多くが、自国の労働者の力を奪いまた発展途上国の安価で豊富な労働力を利用するための手段として脱工業化したとき、中国は世界最大のそして最も安価な部類の労働力供給源でした。

ソ連の失敗が政治・経済両分野の急激で無計画な自由化をもたらしたのに対し、中国は中国共産党の支配と重要部門の国有企業による管理を強力に維持しながら、西側資本への管理された開放の道を歩みました。

 

 

その結果、ソ連が一時西側の金融植民地化となり、経済の解体・不当な買い叩きにあって生活水準の急落を経験したのに対し、中国は、巨大な生産基盤を築き上げ、生活水準を飛躍的に上昇させました。

 

しかし、国内産業を海外の安価な労働力に置き換える過程で、アメリカは自らの経済的覇権の手段を弱体化させるという過ちを犯しました。ドル覇権体制の安定性は、それが唯一の選択肢であるということに依存しています。ところが、アメリカはオルタナティヴの誕生に資金を提供してしまったのです。

 

中国の生産力と世界との経済的統合が高まるにつれ、中国の途上国への融資能力も高まりました。しかし、IMFや世界銀行の融資とは異なり、中国の貸し付けは公共事業として扱われ、ほぼ完全に国家の管理下に置かれます。

 

 

 

中国の国有銀行による政府間融資では、利益を生み出すことは要件とされません。また、中国の金融機関から融資を受けようとする国が構造調整を強いられることもなく、債務の再交渉や取り消しが行われることも珍しくないのです。

 

 

 

 

中国の台頭により、ソ連崩壊後初めて、外国資本への完全な従属か/残酷な孤立・攻撃かの二者択一を必要としない、途上国の真の発展への道筋ができたのです。

 

 

もし発展途上国が西側諸国を回避して基本レベルの自給自足経済を築き、必要な商品を自国通貨で他国と自由に取引することができれば、少数の裕福な帝国中心部と広大な搾取される周辺部という世界の二項対立は解消されるでしょう。

 

これが、中国の台頭がアメリカにとって存亡の危機である理由です。中国が軍事的に世界を支配し、イデオロギーを輸出し、すべての競争を排除することを目指しているためではありません。アメリカがそれらの全てを目指していて、かつ、中国がアメリカの金融独占に対する初めての目に見えるオルタナティブであるためなのです。

 

 

中国の孤立を狙う米国主導のキャンペーンはもう何年も前から続けられています。10年以上前に中国主導のオルタナティブの明確な兆候が現れたからですが、最近集中的に起きた歴史的な変化によって、戦争に向けたタイムラインが圧縮され始めています。

 

第一に、中国は2016年に購買力平価で調整したGDPでアメリカを抜いて最大の経済大国となっており、生のGDPでも10年以内にアメリカを抜くことが予想されます。付け加えれば、経済の過度の金融化により、アメリカのGDPは現時点ですでに不当に大きく算出されています。

 

 

第二に、中国とロシアの関係が日増しに接近しています。かつて超大国であったロシアは今では抜け殻と軽く見られる傾向がありますが、ウクライナにおけるNATOとの代理戦争における生産性の高さは、ロシア経済の真の力が著しく過小評価されていることを示しています。

 

第三に、中国の軍事力は急速にアメリカと拮抗する状況に近づいています。特に、アメリカ主導の攻撃を撃退する際に発揮されるであろう中国の防衛上の優位性は著しく、アメリカに太平洋全域への海軍力拡大を企図させる要因となっています。

第四に、BRICS、the SCO(上海協力機構)、the BRI(一帯一路)は、自ら決めたやり方での工業化および公共インフラへの投資ーつまり、緊縮財政を強いることも依存を助長することもないーに焦点を当てた組織であり、いずれも途上国の間で加速度的に関心を集めています。

 

 

 

 

そして何より決定的なのは、BRICS諸国が米ドルに代わる貿易通貨としてバスケット通貨を導入し、新規加盟国もこの方式に参加できる道を開き始めていることです。より公平な新しい世界通貨システムへの移行は、一直線に進むものではないでしょうが。

 

 

 

 

中国を孤立させようとするアメリカの計画を十二分に理解している中国共産党は、10年以上前からアメリカ経済からの切り離しという壮大なプロセスを着実に進めてきましたが、近時アメリカによる喧嘩腰の貿易関税と制裁が始まって以来、切り離しの努力は加速しています。

 

 

 

 

オルタナティブの優勢によるドル覇権の終了は、アメリカが国内そしてアメリカ帝国を支える800近くの海外軍事基地に赤字支出ができるという途方もない特権を持つ時代の終わりを意味します。その影響は前例がないほど甚大なものとなるでしょう。

 

皮肉なことに、世界は、1944年のブレトンウッズでジョン・メイナード・ケインズが一国の支配を受けない超国家的通貨システムとして提唱したバンコール・システムに回帰してきたようです。それに代わってドルが勝利を収めたことで、80年に渡るドルの覇権がもたらされたのですが。

 

アメリカは今、中国がルールに基づく国際秩序を乱し、西側の価値観を裏切っていると非難しています。しかしそこでは「ルール」とは発展途上国からの搾取の永続であり、「価値」とは人間の幸福を犠牲にした私的利益の追求だということが省略されています。

アメリカが中国の台頭に歯止めをかけるチャンスは、急速に失われつつあります。

しかし、これは本当に米国が中国との軍事的対決のための土台を築いていることを意味するのでしょうか。そして、もしこの対決が避けられないとしたら、アメリカはどのように進めようとしているのでしょうか?

*Part2, Part3と続くようですが、当面続きを翻訳する予定はありません。